舞子
神奈川県川崎市北部に住む、24歳女性の生活を観察し、記録した映像である。彼女は生後7ヶ月の娘を育てながら、週3日、夜キャバクラで働く。彼女の旦那とは私が撮影に行っている最中に離婚をし、シングルマザーになった。子供を育てる為に実家と、その隣にある祖母の家を行き来しながら生活していた。実家には父、フィリピン人の母、妹、うさぎ、鳥がおり、隣の家には 父方の祖母、叔母、寝たきりの猫が暮らしていた。
約1ヶ月間、彼女の生活を観察し見えてきたのは、家族制度、労働環境、シングルマザーの問 題などが複雑に絡み合いながら成り立っている日本の現状だった。そしてそれによって形成される我々の欲求と理想。彼女の主体、価値観は関係性の中で生み出される。主体的であろうとしても、「世間」が「みんな」になるように消費を促す。しかしそれは誰が規定したかもわからない 曖昧な幽霊のようなものである。それでも人は自身と他者との間にある差異に嫉妬し憧れ、また差異を求める欲望を併せ持つ。そして現代の消費文化はその欲望を叶えてくれる。 彼女の生活は地に足のついた、働いて、家族を持ち、生活するという普遍的な人間の行為と、現代の消費社会が混在していたものだった。私には、まるで彼女が現在の日本を背負っているようにも見えた。